トランキライザー 古い友人と 突然 最悪の形で再会した 戦場という どうしようもない環境で出会った 彼のことを考えると 少し鬱に見舞われる その上 同室だった仲間も失った、たった一人の部屋 気持ちが底辺近くまで落ち込むには 充分だった 涙すら出ない 深い思案の中 痛む頭を抱えるように腕枕をし ため息をひとつつく そのとき 「アスラン!ミーティングだ!!とっとと出て来い!この腰抜け!!」 そう 無遠慮に部屋の外から一喝された 声の主には心当たりがあったので 体を起こし インターフォンの画面を見ると 同じく仲間を失い 哀しくないはずはないのに いつも通りの表情をたたえる君の姿があった 「アスラン!!返事も満足にできないのか貴様は!!」 あぁ 聞き慣れた君の 甲高い声がする オレのこんな鬱な気持ちすらも「腰抜けの考えること」と いつものように罵るであろう 君の声が 「今すぐ行くよ イザーク」 君のその傍若無人な振舞いと 弱気な気持ちを一蹴する怒声に オレはどれだけ 背中を押されているだろう 軍服の襟を正し 扉を開けば 君がイラつきながら靴底を鳴らしていた 「オレを待たせるとはいい度胸だな!!」 「すまない」 戦争は オレからいろんなものを奪っていくけれども オレが鬱になるたびに 君は こんな風に怒鳴り散らして 現実に引っ張り戻してくれる 甘ったれるなと言わんばかりに 君がオレの名前を叫ぶから どんなことがあったとしても 君とともに戦おうと 思うんだ いろんなものを失うことは とてもつらいことだけれども 君が こうして いてくれるから 失ったもの全てを心に刻み込んで また 歩き出そうと 終わりが見えないほどに遠くても 歩いていこうと そう 思うよ (END) <BACK> |