さよならのときに きみはいらない



最悪の場合、というものを、考えてみた。

ぼくもきみも、こんな仕事をしているのだから、いつだって最悪の場合はぼくたちの立つすぐ隣にある。

だから、たまには、その最悪の場合に備える、という意味も込めて、

最悪の場合、というものを、考えてみた。


そうだなぁ、どうするだろうか、自分は、と考えたときに、

最後のときに、君の声は聞きたくないな。

と、それだけ、ぽつりと、思った。


きっと迷ってしまうだろうから。

気に喰わないけれども、
不思議と嫌いではなかった君の声がこの耳に届いてしまえば、
どこまでも機械的なこの脳に、急に血が巡り、温度が上がる。


急に、失うのが、自分という存在が消えるのが怖くなって、
足がすくんでしまって、何も出来ない。


そんな気がした。


そんな風に変えられてしまった自分を、なんだかほんの少し、嬉しくも思いながらも、
なんだか、気を抜けば涙がこぼれてしまうような気がして、慌ててそっと、目元を触った。

そんなに、きみにひっぱられてしまっているんだ。
もう、失くすのが、怖くなってしまっているんだ。


きづいてしまった。
君の声を聞いてしまえば、きっともう、足はすくんでしまうだろう。


そんなのは、自分らしくない。
たかだかたった一人の女のために、心を乱す、そんな自分では、
もしかしたら、あの人に嫌われてしまうかもしれない。


だから、さよならのそのときに、僕の近くに、君はいらない。






(END)





レイは、ギルもルナマリアも、好きなのかもしれないと思ったのですよ。 (20060125)


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